令和6年度(2024年度)は「第一に雇用情勢の改善と春闘での高い賃上げ率が確保され実質賃金の改善が図られ、個人消費の改善が図られる。第二に業績改善を背景に企業の設備投資が底堅く推移される。加えて、米国を中心に海外経済の下振れリスクが薄らぐとともに世界的にIT関連需要の回復が見込まれる。こうしたことから2024年度の日本経済は緩やかな回復基調に復帰する見込みである」と言われています。
しかしながら日本経済の実体は、昨年から続く大幅な消費者物価の上昇(インフレ)に対して、日本の勤労者の大多数である中小零細企業での大幅な賃金上昇は大変難しいことや政府の物価高対策が本年度上期で終了することもあり、引き続き実質賃金が落ち込み節約志向に向かい、個人消費の低迷が続くことで日本経済の回復が遅れるのではないかと大変危惧しています。ただ、一昨年来の海外からの旅行者の拡大、加えて、中国本土からの訪日客の増加による更なるインバウンド需要が見込まれていますし、自動車の生産回復等で輸出増加も期待されていますので、新たな政治的対応を行ない、安定的な経済成長が図られることを強く期待するものです。
こうした中、私たち中小零細企業は人手不足と労務コストの上昇により更なる厳しい環境を迎えているものと認識し、組合は組合員の皆様のポストコロナに向けた経営・経済活動の反転をしっかり支援・応援できるよう心してまいります。
各事業別の方針としては、中心事業の一つ「ETCカード貸与事業」については、きめ細かな走行実績の確認・分析により2種類のカード(コーポレートカードとKTKカード)の使い分けを行い、個々の組合員様にベストフィットするご提案の強化を行ってまいります。同時に、事業安定化のためにも新規カード利用者の確保にも努めてまいります。また、外国人材の活用も含めた「物流の2024年問題」に関する情報と対応策などを物流業の組合員様に伝えてまいります。
もう一方の柱である「外国人技能実習生受入などの海外事業」については、本年6月頃の法改正による「外国人技能実習制度」から「外国人育成就労制度(仮称)」への変更(施行は未定)が見込まれており、これに備えた組合としての対応、取り分け「在留実習生の移行の詳細」や「新育成就労制度での入国の詳細」を受入会員企業の皆様に的確にお伝えすることを第一の課題と認識します。加えて「正確で迅速な行政等の手続き」や「受入組合員企業や在留外国人実習生等への心のこもった対応」と言った日常業務の深化に努めてまいります。また、現行の技能実習制度が当分続くことから、会員企業様に「新規技能実習生の受入れ」「技能実習3号への移行」「特定技能1号への移行」へ向けて丁寧な提案を行ってまいります。
組合全体の運営にあたっては、労務費・旅費交通費を含めた諸物価の高騰による管理コスト(費用)の増大が見込まれ、組合経営としては厳しいと認識しております。このため業務のデジタル化やIT化を実施し、業務の改善を行うことで効率化と一層の事業コスト引き下げを行い費用縮減に取り組み最低限の事業利益の確保を図ってまいります。
当組合は今年で創立33周年を迎えました。この間、東日本大震災や新型コロナ感染拡大といった大災害や高速カードの制度変更・技能実習制度の大規模変更も何とか乗り越えることが出来ました。これも一重に組合員の皆様のお陰と深く感謝いたします。
今40年ぶりの「インフレ」という日本経済の大変換の時期を迎え、組合としても初めての経験であり、組合運営の大変革を行うことで乗り切っていかなくてはならないと強く決意し対処してまいります。
改めて「当組合の存在意義は『相互扶助』にあり、組合は組合員の皆様の健全な発展の一助のためにある」を基本理念に、皆様と共に新たなステージへと歩んでまいりたいと存じます。
本年度もどうぞよろしくお願い申し上げます。
関東通信事業協同組合
代表理事 石山誠